日本都市学会第50回大会開催

日本都市学会第50回大会テーマ

都市の活性化とNPO
−新しい主体の登場による公共性の転換−
               
日本都市学会会長 北 川 建 次
近畿都市学会会長 小 森 星 児
 
                                   
 2003年5月、特定非営利活動促進法(NPO法)が一部改正され、NPO活動の一層の拡張と深化が図られた。NPO法人は2003年3月には全国で1万1千を超えており、社会セクターのひとつとして定着しつつある。NPOやボランティアなどにより新たに形成されつつある「市民セクター」は、大きな壁に突き当たっているわが国の社会経済システムにとって、再編と改革への風穴をあけるものとして期待されている。ガバメントからガバナンスへという都市・地域経営システムの転換は、こうした市民セクターの政策への関与と同時に、政府・企業セクターとのパートナーシップによる創造的な都市活力再生をもたらすものと期待されている。
 実際、アメリカでは公的住宅建設や都市再開発事業などにおいてCDCと呼ばれるNPOが事業企画・立案・実施に至るプロセスを担うなど、都市の公共的運営に対して大きな役割を果たしてきたことはよく知られている。わが国でも、一定の条件下ではあるにせよNPOによる都市計画提案が可能となる制度改革が行われており、都市のあり方に対して市民やNPO側からの政策提案や都市活性化活動の参画への制度的な基盤整備が本格化しつつあるといえよう。
 しかし、現時点において、NPOは政策的視点から都市全般に影響力を及ぼすには至っていない。都市の「公」と「私」の領域をつなぐ「共」、すなわちコモン領域におけるアクターとしてNPOを位置づけるとともに、ガバナンスの視点から「新しい公共」を担う主体としてのNPOが政策形成レベルまで参画する仕組みが必要となる。こうした「新しい公共」を担う主体は、NPOだけでなくコミュニティ・ビジネスなどボランタリー精神を核とする幅広く多様・多彩な活動を展開することとなろう。台頭する新たな主体群の重層的連関・連携は、都市の意味をも再定義する可能性を持っている。
 今大会では、NPO等の可能性とその存立条件の議論を通して21世紀都市の構造転換の進路について議論を深め、具体的な道筋を探りたい。以下の論点をはじめとした多様な視点からの研究発表が望まれる。
@ NPOによる都市政策提案・計画立案の可能性(政策決定過程への参画、連携、協働)
A NPOの活動基盤構築のあり方(制度・税制改革、都市における互恵・互酬システム、ソシアルキャピタル、ステイクホールディングアソシエーション)
B 社会事業展開による都市の活性化の可能性(ソシアル・エンタープライズ、コミュニティ・ビジネス)
CNPO等の活動評価(ソシアル・オーディット)と情報公開


日本都市学会第50回大会
プログラム

テーマ
都市の活性化とNPO
ー新しい主体の登場による公共性の転換−

2003年10月23日(木)〜25日(土)

主 催:日本都市学会・近畿都市学会
後 援:大阪市

会 場:大阪市立大学学術情報総合センター
558-8585 大阪市住吉区杉本3-3-138
TEL 06-6605-3345


10月23日(木)                     エクスカーション

13:30〜16:00 エクスカーション(水都めぐり:大阪市水辺コース)
       参加費 2,000円 なんばハッチ前桟橋集合(13:15)
     

10月24日(金)               大阪市立大学学術情報総合センター

9:30〜    受付開始
    参加費 1,000円、資料費 1,000円、懇親会費 8,000円(学生 5,000円)

10:00〜10:10 開会挨拶     日本都市学会会長  北川 建次
                近畿都市学会会長  小森 星児

10:10〜11:10 特別講演

  「日本の都市政策について」        大阪市長 磯村 隆文

11:10〜11:25 日本都市学会賞(奥井記念賞)授与式

11:25〜11:40 日本都市学会総会

11:40〜12:30 昼 食(自由)

12:30〜15:00 学会創立50周年記念シンポジウム「都市学の新世紀」

   基調報告            関東都市学会会長  藤田 弘夫
   パネルディスカッション
     コーディネーター     東北都市学会会長  吉原 直樹
     パネリスト        関東都市学会会長  藤田 弘夫
                   中部都市学会理事  竹内 伝史
                   近畿都市学会会長  小森 星児
                   中四国都市学会会長 森川  洋
                  九州都市学会会長  北村 速雄

15:10〜17:00 基調講演

「まちづくりとNPO」           計画技術研究所代表 林 泰義
「都市政策とNPO−市民の政策形成を支援する」NPO政策研究所 直田春夫


18:00〜20:00 懇親会(天王寺都ホテル)

10月25日(土)           大阪市立大学学術情報総合センター

10:20〜12:00 研究発表A

研究発表1A まちづくりとNPO(1)                     第1会場

 司会 井澤知旦(都市研究所スペーシア)・山本剛郎(関西学院大学)

1-1 産学官民コミュニティの形成と産業支援NPO〜INS、KNSを事例として(堂野智 史)
1-2 ソシアル・エンタープライズの存立基盤に関する考察(井上智之)
1-3 都市ガバナンスとソシアル・エンタープライズ−パートナーシップによる地域イノベーションの可能性−(加藤恵正)
1-4 雇用・就業機会創出とコミュニティ・ビジネスの課題(大島博文)
1-5 他部門連携を通したNPOの成長によるコミュニティ・ビジネス展開の事例考察−障害 者旅行支援を目的としたNPO法人、旅とぴあ北海道を事例として−(今尚之・内田和博・下間啓 子)


研究発表2A まちづくりとNPO(4)                     第2会場

 司会 阿部和俊(愛知教育大学)・竹村保治(大阪市政研究所)

2-1 NPO法人との連携によるまちづくりの取組み−北九州市の事例−(松本元)
2-2 文化空間の創造をめぐる市民協同と地域活性化−NPO映画館(張智恩)
2-3 地方都市のまちづくりにおける町内会のかかわり方に関する研究−行橋市の事例につい て その1−(九十九誠・北村速雄)
2-4 まちづくり円卓会議の設立と活動〜京都市右京区の経験〜(土井勉・北村隆一)
2-5 ブランドと場所性−まち・地域ブランド創出へ向けて(松本行真)


研究発表3A 都市再生と文化                         第3会場

 司会 藤井正(大阪府立大学)・服部けい二郎(アーバン・アメニティ研究所)

3-1 都市経済と文化開発−大都市産業立地政策の視角から−(本田洋一)
3-2 都市下層の文化研究−山谷ドヤ街を事例として(馬場佳久)
3-3 環境と都市の再生と公共性(家木成夫)
3-4 スウエーデンストックホルム市における都市と貧困(1)スウエーデンストックホルム市における都市再生プロジェクト−ハマービーショースタッド開発の事例研究(麦倉哲・義 平真心)
3-5 スウエーデンストックホルム市における都市と貧困(2)ストックホルム市におけるホームレス自立支援政策とNPOによる自立支援活動(義平真心・麦倉哲)


研究発表4A まちづくりと交通                        第4会場

 司会 由井義通(広島大学)・熊田俊郎(駿河台大学)

4-1 鉄道を活かした大都市化・分都市化構造のまちづくり(戸所隆)
4-2 大都市における中量軌道システムHSSTの開発と事業化の過程(林  上)
4-3 「都市鉄道」の成立−戦間期大阪市・近郊における鉄・軌道の技術的融合−(三木理史)
4-4 公共交通事業における行政評価のあり方について(熊谷勇治・磯部友彦)
4-5 非日常性買物における移動時間・滞在時間配分の研究(出島甫信・上村寿志・樽本浩一)

12:00〜12:50 昼食(自由)

12:50〜14:30 研究発表B

研究発表1B まちづくりとNPO(2)                    第1会場

 司会 佐藤直由(東北文化学園大学)・高山正樹(大阪外国語大学)

1-6 まちづくりNPOを通じたコミュニティ・ガヴァナンスの生成(平井太郎)
1-7 都市問題の解決にNPOが果たす役割−神戸市の事例から(相川康子)
1-8 地域社会の活性化とNPOの役割・課題(田中豊治)
1-9 地域経営における中間支援NPOの役割(金森康)
1-10 大都市におけるNPO法人の現況と課題−東京都世田谷区のアンケート調査の結果から−(小笠原尚宏)


研究発表2B 都市の行政と計画(1)                     第2会場

 司会 日野正輝(東北大学)・柴田一郎(北九州都市協会)

2-6 自治体のアウトソーシングの実態と課題(油川洋)
2-7 自治体内設置型シンクタンクの類型に関する一試論−その潮流と特徴を考える-(牧瀬稔)
2-8 地方分権・市町村合併と府県改革のあり方に関する考察(原田晃樹)
2-9 都市内分権型都市構造と行政区のあり方−川崎市を例に−(埴原朋哉)
2-10 アジア・メガシティにおける地方制度改革と地域住民生活の動向−DKIジャカルタを事例として−(ラファエラ D.ドウィアント・イルマ S.ヤンティ・吉原直樹)


研究発表3B 都市と居住                           第3会場

 司会 山田誠(京都大学)・北村速雄(西日本工業大学)

3-6 岡山県の町並み保存事業−倉敷市下津井地区等の事例から−(羅燕娟・市南文一)
3-7 混住化と檀家集団−宮城県仙台市泉区の事例−(高橋嘉代)
3-8 千里ニュータウンの公営住宅における居住者の属性(香川貴志)
3-9 都市の安全・安心に対する住民の意識構造の把握に関する研究(梶田佳孝・樗木武)
3-10 国勢調査データによる大都市における高齢者居住移動の推移(東川薫)


研究発表4B 都市の活性化(1)                       第4会場

 司会 佐々木雅幸(大阪市立大学)・石黒哲郎(芝浦工業大学)

4-6 遊歩の復権と都市再生(大矢正樹・北村隆一)
4-7 街路空間のにぎわい評価に関する研究−御堂筋オープンテラス社会実験を事例にして− (石井裕介・日野泰雄・内田敬)
4-8 都市のアメニティとしての映画館の立地変化(山下博樹・野口麻美)
4-9 神保町の地域力(大内田鶴子)
4-10 金沢市中心部に関わる高校生の認知距離(伊藤悟・深川由紀)

14:50〜16:50 研究発表C

研究発表1C まちづくりとNPO(3)                    第1会場

 司会 浦野正樹(早稲田大学)・吉原直樹(東北大学)

1-11 上町台地を中心としたネットワーク型まちづくりNPOによる試行(早川厚志)
1-12 地域の自然資源と共同管理型NPO−運動の「協働化」と「政策化」をめぐって−(岩田 若子)
1-13 NPOハウジングを通じた21世紀型住宅供給・更新施策の展望(松元隆平)
1-14 協働による自然再生型活用事業とNPO−もう一つの都市再生−(木原勝彬)
1-15 兵庫まちづくりプラットフォーム−行政・NPO協働への提案−(野崎隆一・小森星児)


研究発表2C 都市の行政と計画(2)                     第2会場

 司会 竹内伝史(岐阜大学)・小長谷一之(大阪市立大学)

2-11 住民主体のコミュニティづくりをめざす地域福祉活動計画策定について(平松道夫)
2-12 市町村障害者計画におけるノーマライゼーション概念の考察−静岡県下の事例−(増田金重)--発表辞退
2-13 開発許可条例の課題と可能性について(井出光)
2-14 都市自治体による主体的な都市づくりと都市計画制度の見直し(河田昭則)
2-15 アメリカ合衆国マサチューセッツ州レキシントンにおける都市計画と土地利用(根田克彦・伊藤悟)
2-16 わが国における都市公園整備の推移と事業整備指標に関する検討(塩出興二)


研究発表3C 都市と産業                           第3会場

 司会 成田孝三(大阪商業大学)・藤田弘夫(慶応義塾大学)

3-11 大阪府地域の産業における新規・成長分野の検討と政策評価−「中小企業経営革新支援法」認定企業の実態分析−(河藤佳彦)
3-12 会津若松市の工業展開−「場所」への着目から−(高橋英博)
3-13 大阪の中枢管理機能の実態調査(野口隆)
3-14 地方都市における新規学卒者の就業動向−小樽市を事例として−(佐藤直由・猪股歳之)
3-15 日系人労働者の地域労働市場とエスニシティ(大久保武)


研究発表4C 都市の活性化(2)                       第4会場

 司会 赤崎弘平(大阪市立大学)・加藤一誠(関西外国語大学)

4-11 ウオーターフロントをいかした中心市街地再整備方策−三重県四日市市を事例に−(稲垣昌茂)
4-12 TMOの課題と方向性−堺市の事例から−(西本秀司)
4-13 産業構造の変化と中心市街地の変化/名古屋市中区長者町の事例(瀬口哲夫)--発表辞退
4-14 地域通貨による中心市街地活性化の試み(松村茂)
4-15 都市戦略に関する研究その1.北九州市における都市戦略としての都心・副都心(北村速雄・九十九誠)
4-16 イギリスの都市再建プランに関する一考察(安田孝)


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