日本都市学会第51回大会
日本都市学会第51回大会テーマ
現在、大学は重要な社会資本・都市基盤として、地域社会に不可欠な知的なインフラストラクチャーとなっている。大学は最近の社会・経済状況の変化に伴い、これまで以上に時代をリードするための改革論が盛んに行われている。今まさに、大学の側からも、地域の側からも「大学の役割」について議論が必要とされ、重要な共通テーマになっている。 大学は明治期から今日に至るまで、政治・行政制度の整備や産業政策の一環として、国家の主導のもとに、整備が進められた。大学の建設は全国に広がり、今日の高学歴社会を実現した。しかし、日本都市学会第16回大会(1969年)の大会報告に述べられているように、大学は地元の都市間題の解決には無力であり、都市も大学も「あまりにも国家とだけ緊密であり、しかもヒエラルヒーの縦糸に連がっての話」であった。今日なお、国立大学のみならず公立・私立大学も運営は国家の強い統制のもとに置かれ、近年ようやく国立大学の独立行政法人化など、新たな大学像の模索が始まったばかりである。 日本における中央省庁の教育への規制はきわだって強いものとなっている。大学もその例外ではない。しかし今日、社会・経済の大きな変化により教育制度全体の改革がせまられている。こうしたなかで、新たな視野から、大学が誰のために、何を目的とした組織であるのかを、改めて考えてみる必要があるのではないだろうか。 近年、多くの地域が地場産業の空洞化、人口減少、失業率の上昇、コミュニティの崩壊、犯罪率の上昇など、経済成長の下降サイクルに起因する様々な問題を抱えている。多くの地域で、活力を高度成長期のように企業誘致によって解決できず、これまでとは異なるかたちで活力を創出する知識や知恵が求められている。 こうしたなかで、大学を地域活性化・地方分権の文脈から、ひとつの「地域資源」として位置づけようとする動きが強まっている。実際、大学は巨大な経済力と大きな信用を持つとともに、政治的にも力強い「制度市民」となりうる存在である。大学の活動は主導的であり、たえず公的な合意形成部門や、企業の管理部門、財団や基金などと交流している。大学の活動は学生の教育にとどまらず、多彩な学問群が基礎的な知識や研究を超えて、オリジナルな思考、革新的なアイデアの宝庫となっている。教授と学生は地域社会に、きまざまな才能、専門性、問題解決のスキル、学生のエネルギーを提供できる。 大学の地域社会における位置づけ、大学の経営はまだ問題の端緒をつかんだ段階であるが、現実にはさまざまな大学と地域の交流が進められている。技術移転機関と大学発ベンチャーの推進、大学コンソーシアムの結成、教育特区、インターンシップなどである。あるいは、教員個人としても長年地域にかかわり、様々な問題点について考えてこられたであろう。1980年後半から地方公共団体が設置した大学が相次いで開学し、地域社会と大学の間にあらたな関係を切り開きつつある。しかしその経営方法については、まだまだ模索状況にあるといえよう。 今日、大学は大学紛争後30年を経て、学生数の減少という未曾有の事態を迎えている。多くの大学が経営条件の変化のなかで、高度のIT化をはじめとする経済文化の変容に対応した教育内容の見直しを進めながら、大学にいかなる新しい使命を見出すかという課題に直面している。本大会では、大学人の研究発表と地域社会を代表する方々の研究発表を交流させ、「大学にとって地域社会とは何か」、「地域社会にとって大学とは何か」について議論を重ねたい。そして、その成果をそれぞれの地域と大学に持ち帰り、さらなる議論の叩き台とすることを期待する。 |
13:30〜17:30 エクスカーション(醤油工場と歩いて回る犬吠埼)健脚コースです
9:30〜 受付開始 参加費 1,000円、資料費 1,000円、懇親会費 6,000円(学生3,000円) 10:00〜12:30 研究発表T 研究発表1 大学と地域社会 第1会場 司会 吉原直樹(東北大学)・堂前亮平(久留米大学) 11 イギリス大学都市の地域計画と再建プラン(安田孝) 12 廃校の危機に瀕した大学の再生と地域力(中村實) 13 カナダにおける大学と地域社会(林 上) 14 町衆を育てる地域の大学(戸所隆) 15 都心の大学キャンパス(瀬口哲夫) 研究発表2 都市の経営と権限 第2会場 司会 成田孝三(大阪商業大学)・内藤辰美(日本女子大学) 21 市町村合併のランクサイズによる分析(中川訓範) 22 合併新市の将来人口−市町村合併は人口増に有効か−(東川薫) 23 権限移譲をめぐる都道府県−市町村関係(原田晃樹) 24 エネルギー関連税制の改革と地方税制(兼子良夫) 研究発表3 都市の産業とインフラ 第3会場 司会 由井義通(広島大学)・阿部和俊(愛知教育大学) 31 地理情報システムの商店街HPへの応用に関する基礎的研究(松村茂) 32 産業振興と道州制(本田洋一) 33 東北新幹線八戸開業が住民にもたらした変化と課題(櫛引素夫・北原啓司) 34 地方空港の国際化と空港後背地の競合(今井英文) 研究発表4 土地利用 第4会場 司会 山田誠(京都大学)・石黒哲郎(芝浦工業大学) 41 地域クラスター形成に向けて−場所性、ブランドの見地から−(松本行真) 42 SSEを用いた用途地域指定支援システムの構築に関する研究(末久正樹・外井哲志・梶田佳孝) 43 市街化区域における農地の変容構造に関する研究(梶田佳孝・外井哲志・末久正樹) 44 市街化調整区域における開発動向と土地利用推移の予測に関する研究(山内真也・外井哲志・梶田佳孝) 45 大店立地法の限界とその役割−仙台市郡山地区における事例の検討−(千葉昭彦) 12:30〜13:30 昼 食 13:30〜13:50 開会挨拶 日本都市学会会長 北川 建次 関東都市学会会長 藤田 弘夫 13:50〜14:30 特別講演
14:30〜17:00 シンポジウム「大学と地域社会の連携」
17:00〜17:15 日本都市学会賞(奥井記念賞)授与式 17:15〜17:30 日本都市学会総会 18:30〜20:30 懇親会(銚子プラザホテル)
10:00〜12:30 研究発表U 研究発表5 都市の過去と未来 第1会場 司会 熊田俊郎(駿河台大学)・檜槙貢(作新学院大学) 51 「多文化都市」論の視座と課題(渡戸一郎) 52 教育制度と公共性(家木成夫) 53 開港都市横浜・函館における明治初期の風俗統制−違式註違条例を中心に(百瀬響) 54 明治および大正時代における社会開発に関する一考察−神奈川から川崎までの京浜工業地帯の社会開発を主となる分析視点として−(佐々木隆夫) 55 スローツーリズムを求めて−歴史文化遺産の保全と観光交通施策−(竹内伝史) 研究発表6 コミュニティと支援 第2会場 司会 浦野正樹(早稲田大学)・高田弘子(都市調査室) 61 漂泊する都市下層−隅田川ホームレス現象の深層(馬場佳久) 62 自営業者と地域コミュニティの関係に関する一考察(門間由記子) 63 バス利用者の意識構造について(堤昌文・早川信介・真鍋寛和) 64 地域におけるコミュニティビジネスの意義と役割に関する考察(吉武聡) 65 市町村障害者計画におけるノーマライゼーション概念の考察−静岡県の事例−(増田金重) 研究発表7 都市居住 第3会場 司会 藤田弘夫(慶應義塾大学)・中井道夫(山梨学院大学) 71 景観評価を通した住民参加型樹種決定の試み〜大分市坂ノ市地区を事例として〜(亀野辰三) 72 岡山市の都心立地型超高層分譲マンションにみる居住者の諸属性と居住環境評価(香川貴志) 73 震災復興土地区画整理事業六甲道地区A町住民の転居行動とその語り(西野淑美) 74 時間・空間の重層性からみた建物の転用に関する研究(南後由和) 75 東北地方の都市における街なか居住政策の展開と課題(上村康之) 研究発表8 地域づくりの手法 第4会場 司会 戸所隆(高崎経済大学)・井上繁(常磐大学) 81 成熟化する観光都市における地域資源を活かした中心商業地のあり方−三重県伊勢市を事例に−(稲垣昌茂) 82 イギリスの地域戦略パートナーシップ(金川幸司) 83 観光画像情報からみた景観資源に関する研究−「祭り」に関する観光写真を対象として−(日高圭一郎) 84 まちおこしとしての観光資源の活用について(早川信介・堤昌文・真鍋寛和) |