日本都市学会第48回大会報告

 日本都市学会第48回大会は、2001年10月26日・27日の両日にわたって北九州市内の北九州市立大学北方キャンパスにおいて開催されました。大会テーマは「都市のリノベーション」、特別講演に北九州市の末吉興一市長を迎え、研究発表は過去最大の43件にのぼる盛大な大会となりました。参加者数は131人(学会員93人、非会員38人)、懇親会の参加者数は71人でした。
 この大会の中で、2001年度の日本都市学会賞(奥井記念賞)授賞式も行われ、由井義通、有末賢、店田廣文の3氏に賞状および記念品が贈られました。

日本都市学会第48回大会テーマ

                都市のリノベーション

                                      日本都市学会会長 北 川 建 次
                                      九州都市学会会長 柴 田 一 郎

 新しい全国総合開発計画「21世紀の国土のグランドデザイン」(1998.3.31閣議決定)では国土計画の4大戦略の一つに“都市のリノベーション”を掲げている。それは、過密に悩む3大都市圏における生活空間の再生と高次都市機能の円滑・効率的な発揮を可能とするための都市基盤の修復・更新を意図しているものであり、他の地方中枢都市、地方中核都市群の整備も、「大都市の負荷の軽減を図ることにより、大都市のリノベーションに資する」とし、3大都市圏の過密解消のために行うという位置づけである。
 大都市の過密問題は、1960年代に始まる高度成長時代以来の国家的課題であり、この間に整備された都市基盤も老朽陳腐化し、現在さらには将来の都市生活、経済活動を支えるための機能の増強や刷新が急がれることは確かである。しかし、都市のリノベーションは、3大都市圏に限った課題ではない。さらに、3大都市圏の過密解消という認識自体も問われなければならない。
 わが国の人口のほぼ8割は都市住民であり、都市外居住者でも日常生活を都市に依存する人口を加えれば、日本人口のほとんどが都市関連人口と考えてもよいだろう。その過半が3大都市圏以外の地方都市に関連する人口である。
 都市住民の価値観とライフスタイルの多様化、少子・高齢化、経済のサービス化・ソフト化、IT革命とハイモビリティ化、さらには国際化、環境保全などの新しい潮流は、地方の都市にも否応なく波及し、地方都市においても、これまでの経済・社会システムや都市基盤の修復・更新が求められているところである。加えて、近年の地方分権の進展は、体力と資質に乏しい地方都市の自治体にも、その主体的な行政運営と都市経営の変革を要請している。
 ましてや、「都市の時代」と総括された20世紀が終り、「21世紀は都市間競争の時代」ともいわれるなかで、都市が地域の付託に応えて自立し持続的発展を可能とするためには、都市のリノベーションは、いまや、大小、新旧を問わず、新しい時代に向けて全ての都市が抱える普遍的な課題ともいえよう。
 その意味では、今年度の第48回日本都市学会が、「都市のリノベーション」を主テーマとして北九州市で開催されることは実に意義深い。それは、北九州市が工業都市からの脱皮と新たな都市再生に向けての先進的な“都市リノベーション”の実践・実験都市といえるからである。
 本大会では、そのような北九州市の変貌を目の当たりにしながら、都市再生の視点、方向論、さらに都市戦略等について日本都市学会会員の皆様の幅広い研究討議を期待したい。



日本都市学会第48回大会
プログラム

テーマ:都市のリノベーション

会場:北九州市立大学北方キャンパス

2001年10月26日(金)・27日(土)

主催 日本都市学会・九州都市学会
共催・協賛 北九州市・(財)北九州都市協会


10月26日(金)

9:30〜    受付開始
        参加費 1,000円、資料費 1,000円、懇親会費 6,000円(学生 4,000円)
        エクスカーション参加費 1,000円 

10:00〜10:10 開会挨拶 日本都市学会会長  北川 建次 本館C−101教室
                 九州都市学会会長  柴田 一郎

10:10〜11:30 特別講演                            本館C−101教室
「北九州市の都市再生〜北九州市で進むルネッサンス計画〜」
北九州市長  末吉 興一

11:30〜11:40 日本都市学会賞(奥井記念賞)授与式 本館C−101教室

11:40〜12:00 日本都市学会総会 本館C−101教室

12:00〜13:00 昼 食(自由)

13:00〜17:00 研究発表T

研究発表1 都市空間論の視点から1                    第1会場(本館D−304教室)
 司会 杉野尚夫(名古屋市)・原田統之介(志学館大学)・伊藤維年(熊本学園大学)
11.空間計画と公共性−空間モデル構築を目指して(松元行真)
12.豊田市における中心市街地の形成と活性化(楠恭雄/西脇正倫)
13.用途混在地区を含む単一中心都市の空間構造について(田代敬大/樗木武)
14.既成市街地の再開発による長野市・長野地域の再構成(田中清明)
15.鉄道の連続立体交差化を中心とした折尾地区総合整備計画について(深堀秀敏)
16.地方都市における中心市街地活性化の取り組み−椎田町中心市街地活性化計画を通して(山口ひろこ/北村速雄)
17.釜山の都市景観形成における都市政策の役割−臨港斜面市街地景観を中心に(徐金泓)
18.住民の土地利用に関する意識構造について(堤昌文/樗木武)

研究発表2 都市政策論の視点から1                    第2会場(本館D−402教室)
 司会 山田誠(京都大学)・鶴田善彦(久留米大学)・由井義通(広島大学)
21.経済的中枢管理機能からみた日本の主要都市−近年の動向を中心に−(阿部和俊)
22.東アジア経済圏と北九州市(工藤憲男)
23.まちづくりにおけるITの期待−新しいITの役割と新しい情報公開−(松村茂)
24.産業・頭脳未来都市を目指して〜北九州学術研究都市〜(尾上一夫)
25.北九州市公共交通戦略プラン〜生活交通対策について〜(西元千明)
26.高台地区住民の日常生活を支える交通手段の確保−北九州市八幡東区を事例に−(稲田和子)
27.地方中枢都市の成長力の差の兆し(日野正輝)
28.都市の時代の政策形成とシンクタンク−地域シンクタンクの視線から−(檜槇貢)

研究発表3 都市生活論の視点から                      第3会場(本館D−403教室)
 司会 浦野正樹(早稲田大学)・藤田弘夫(慶應義塾大学)・高田弘子(都市調査室)
31.アジアメガシティにおける地域医療活動の一存在形態−ジャカルタのポシアンドゥを中心として−(ラファエラD.ドゥイアント/齊藤綾美/吉原直樹)
32.グリーンプロシューマリズムと福祉社会−「循環型社会」との関連で−(岩田若子)
33.大都市をめぐる高齢者、子育て期家庭の居住移動−ライフコースと行政サービスの視点から(東川薫)
34.救急事故の増加原因とその対応〜都市生活における家庭内防災力の低下〜(谷延正夫)
35.市民との協働によるまちづくり〜戸畑まちづくり構想〜(今井信雄)
36.実践者におけるノーマライゼーション概念の考察−市町村障害者計画を軸にして−(増田金 重)
37.市民参加型みち美化システムに関する一考察−街路樹を巡る参加型道路美化活動の現状と特徴(亀野辰三)
38.都市社会構造と青少年政策の展開過程〜ワシントン州シアトル市を事例に〜(槇石多希子/高橋満/法澤明子/櫻井常矢)
39.首都圏周辺地域における住民生活とまちづくり(宮崎栄二)

18:00〜20:00 懇親会
          リーガロイヤルホテル小倉3F 響の間

10月27日(土)

9:30〜12:00 研究発表U

研究発表4 都市空間論の視点から2                     第1会場(本館D−304教室)
 司会 堤昌文(西日本工業大学)・井澤知旦(都市研究所スペーシア)
41.公共施設の効率的配置と合併のインセンティブ−理論モデルによるアプローチ−(田村健司/樗木武)
42.市街化調整区域における土地利用の変容構造の把握に関する研究−福岡市を事例として−(多田憲太郎/樗木武/梶田佳孝)
43.市街化区域における農用地と森林の変容に関する研究(原信史/樗木武/梶田佳孝/掛谷倫寛)
44.市街化区域における非プロジェクト型、プロジェクト型メッシュの土地利用パターン及び土地利用区分にもとづく推移予測に関する研究(李太鉉/樗木武/河野譲二)
45.都市のリノベーション/半田市駅前の市街地整備(瀬口哲夫)
46.近代工業都市の市街地形成−洞岡村住宅建設と計画的市街地形成(北村速雄/九十九誠)

研究発表5 都市政策論の視点から2                     第2会場(本館D−402教室)
 司会 佐藤直由(東北文化学園大学)・阿部和俊(愛知教育大学)
51.地方自治体の公的合併の展望−平成の大合併の可能性分析−(油川洋)
52.前橋・高崎市地域における都市連携と合併に関する提言−地方分権時代の空間的再編成−(新保正夫)
53.地方分権化の戦略と地方自治体のありよう−ガヴァナンス論の展開のために−(末良哲)
54.英国の都市形成と都市再生政策に関する一考察(安田孝)
55.現代日本の社会変動と都市住民組織の再編−足立区・八王子市地域リーダーアンケート調査に基づいて−(和田清美/村松加代子)
56.首都機能移転と都市のリノベーション(戸所隆)

研究発表6 都市問題の視点から                        第3会場(本館D−403教室)
 司会 堂前亮平(久留米大学)・日野正輝(東北大学)
61.コミュニティ研究Part6−ルールの明文化をめぐって−(丹羽弘行)
62.都市模型・シュノーケルカメラシステムを活用したまちづくり教育に関する研究(日高圭一郎)
63.大都市主要ターミナルのリノベーションと都市構造変化(林上)
64.「派遣労働」にみる日系人労働者の地域労働市場への構造化−地方都市・長野県上田市M企業に就労する日系人労働者の事例を手がかりに−(大久保武)
65.大規模ショッピングセンターの立地と地域性、計画性−英国Dartfordにおける事例の検討−(千葉昭彦)
66.オーストラリア・ビクトリア州における地方中心地の変容(伊藤悟/藤井正)

12:30〜    エクスカーション(集合場所:本館1Fロビー)
        北九州博覧祭会場:マイクロバス、博覧祭会場内で解散

トップページへ戻る