【日本都市学会第52回大会テーマ】
地域ブランドを目指したまちづくり
日本都市学会会長 小森 星児
東北都市学会会長 佐々木公明
個性あるまちづくりはテーマとして決して新しいものでなく、効率的で均質的なまちが全国に広がった1970年代から議論されてきているものである。
しかしながら、21世紀に入り、高速交通と通信技術の飛躍的発展を背景として、わが国の地域・まちづくりを取り巻く環境は大きな変化に直面している。世界的に広がる社会経済のグローバリゼーションの進展と自由競争による効率性の追求が、激しい都市間・地域間競争を生み出してきた。また、規模の利益を主たる理由とした「平成の大合併」は、場所・地域の特性を見えにくくし、合併後の新しい地域の姿が充分描ききれていない状況にある。さらに、初めて経験する「人口減少時代」にあって、地域の持続的発展に不透明感が漂い、地域間のシステムや地域コミュニティのあり方が大きな課題になっている。
このような様々なレベルで大きな変化に直面している今日、人々が生きている「場所」の重要性を改めて認識させられるのであり、地域に立脚したあるべき「まち」の姿の創造とその準備のための議論を更に発展させていくことが求められている。
「地域ブランドを目指したまちづくり」は、生きる「場所」であるための地域づくりそのものである。その論点は、まちの持続的発展を可能にさせる要因を見つけ出し、そこで育まれた地域固有の資源をブランドとしていかに形成させるかという戦略課題を内包している。
「まち」の持続的発展の観点に立つまちづくりは、その「まち」固有の自然、風土、歴史、文化、コミュニティを下敷きとして、そこでのくらし、なりわい、文化創造に持続的に働きかける過程そのものである。この地域のくらし、なりわい、文化創造の営みは、他の地域とは区別された地域固有のものを形成することとなるが、これがブランドとして結晶するには、この価値に共感する多くの支持者を得ることが不可欠である。「地域ブランドを目指す」ためには、その地域の固有の資源を原石として磨き上げ、この輝いた石の光をその地域はもとより、他地域の人々との共有財産としていく戦略を持つことが必要である。つまりその地域が独善的にまちをつくるのではなく、他地域の人々も共鳴する企画と、無関心層を掘り起こすマーケティングの能力を十分に発揮しなければならない。さらに敷衍するならば、「地域ブランド」を形成する過程で、近隣の都市・地域間で競争を超えた連携が始まり、そのブランドをより一層大きなものにする力となり得る可能性もある。
「地域ブランドを目指したまちづくり」は、地域固有の資源に裏打ちされた「まちの生き方のデザイン」を問うものであり、そのための戦略の構築と方法論の確立、具体的事例の解析などを巡り、活発な討論を捲き起こすことを本大会の目標として掲げるものである。例えばこれまでのまちづくりによる再発見、地産地消による地域づくり、自然・風土を活かした環境デザイン、まちの企画・マーケティング、まちづくり合意形成等、多様・多面的なテーマと課題が存在する。
この大会が全国から多くの参加者を得て、内容豊かな研究発表と活発な議論を通して、人間の生きる「場所」としての都市の持続的発展に活かせる有益な知見を共有できるようになることを期待したい。
日本都市学会第52回大会
プログラム
テーマ
地域ブランドを目指したまちづくり
【2005年10月13日(木)〜15日(土)】
主 催:日本都市学会・東北都市学会
後 援:盛岡市
会 場:岩手教育会館
〔盛岡市大通1−1−16〕
日本都市学会
本部事務局
〒631−8502 奈良市山陵町1500奈良大学文学部地理学教室内
<TEL&FAX>0742−43−9042 <e-mail>info@toshigaku.org
<ホームページ>http://www.toshigaku.org/
大会事務局・東北都市学会事務局
〒989-8551 仙台市青葉区国見6−45−1 東北文化学園大学医療福祉学部保健福祉学科
佐藤直由研究室気付(※大会に関するお問い合わせはこちらにお願いします)
<TEL>022−233−3987 <e-mail>snao@hss.tbgu.ac.jp
10月13日(木) エクスカーション <盛岡市内>
13:30〜17:30 伝統的建築物の再生と活用―盛岡の近代と現代―
内容 :岩手県公会堂、旧盛岡銀行本店、旧九十銀行本店、伝統的商店街上層階、旧屋敷南昌荘
参加費:1000円程度(バス代・入場料・飲み物代)
18:00〜20:00 理事会
会場 :「マリオス」ビル5階第2会議室(盛岡駅西口)
10月14日(金)午前 研究発表T <岩手教育会館>
9:30〜 受付開始
参加費 1,000円 資料費 2,000円 懇親会費 6,000円(学生 3,000円)
10:00〜11:30 研究発表T
研究発表1 地域ブランドとまちづくり(A) 第1会場
11 会津ブランドに関する考察(松村 茂)
12 地方都市活性化とテーマパーク構想:チューリップによる町おこしを中心として(百瀬 響・品田早苗)
13 温泉観光地における中心街の構造変化とそのあり方-伊香保温泉を例に- (稲垣昌茂)
研究発表2 居住と都市環境(A) 第2会場
21 東北地方の都市における街なか居住に関する政策の展開と課題(上村康之・北原啓司)
22 郊外宅地開発の今日的課題−宮城県名取市を検討対象として− (千葉昭彦)
23 モデル・コミュニティ「洞岡村」の研究-不動産登記簿における所有者の変遷について-(北村速雄)
研究発表3 コミュニティと生活支援(A) 第3会場
31 「祇園博多山笠」における縄の巻き方について(松内紀之)
32 大都市災害発生時における災害弱者のための地域支援システムの現状と課題(和田清美)
33 大都市周辺部の低頻度運行鉄道に対する沿線住民の意識ー東海交通事業・城北線を対象に(永田智裕・磯辺友彦)
研究発表4 都市基盤と行財政(A) 第4会場
41 地域固有財と公共性(家木成夫)
42 スピルオーバー効果を考慮した市町村財政におけるフライペーパー効果の分析(横井渉央・佐々木公明)
43 中央政府及び地方による教育財政の経済学的分析(リヒター アクセル・増田 聡)
11:30〜12:00 日本都市学会総会 第1会場
12:00〜13:00 昼食休憩(周辺飲食店をご利用ください。)
10月14日(金)午後 公開シンポジウム <大ホール>
13:00〜13:15 開会挨拶 日本都市学会会長 小森 星児
東北都市学会会長 佐々木公明
13:15〜13:25 歓迎挨拶
「地域ブランドをいかした盛岡のまちづくり」
盛岡市長 谷藤 裕明
13:25〜13:40 日本都市学会賞(奥井記念賞)授与式
13:45〜14:30 基調講演
「地域をつくる−東北学からの問い−」(仮題)
東北芸術工科大学教授 赤坂 憲雄
14:40〜17:00 シンポジウム「地域ブランドを目指したまちづくり」
コーディネーター 宮城大学教授 山田 晴義
パネリスト 武蔵野美術大学教授 長澤 忠徳
盛岡市ブランド推進室長 坂田 裕一
東北芸術工科大学東北文化研究所研究員 飯田 恭子
JMR生活総合研究所 松本 行眞
18:00〜20:00 懇親会(交流会) 会場:「ジャーラン・ジャーラン」(盛岡市駅前通9−3)
10月15日(土)午前 研究発表U <岩手教育会館>
9:20〜 受付開始
10:00〜12:00 研究発表U
研究発表5 地域ブランドとまちづくり(B) 第1会場
51 世界遺産を核とした中小都市のまちづくり戦略について(今井健一)
52 地場産業とまちづくり−常滑市の「やきもの散歩道」−(瀬口哲夫)
53 文化によるまちづくり−新得町の意識調査から−(中鉢令兒)
54 スローツーリズムについての市民の認識(笠島 舞・竹内伝史)
研究発表6 居住と都市環境(B) 第2会場
61 開港都市新潟・神戸の明治初期の風俗統制(百瀬 響)
62 企業の環境美化活動とアダプト・プログラム(亀野辰三)
63 市街地の地下利用空間と地下水害対策に関する研究(梶田佳孝)
64 多自然居住の課題と展望(小森星児)
研究発表7 コミュニティと生活支援(B) 第3会場
71 サービス圏域と自治の区域(原田晃樹)
72 当事者におけるノーマライゼーション概念の考察〜静岡県下の事例から〜(増田金重)
73 都市政策におけるサイレント・マジョリティーについての考察〜聞き取り調査を踏まえて〜(一野 千夏)
74 放課後児童クラブの地域展開(由井義通)
研究発表8 都市基盤と行財政(B) 第4会場
81 ロンドンドッグランドの形成と再建(安田 孝)
82 ドイツ・ハイデルベルグ市における新架橋計画(川田 力・由井義通・フンク カロリン)
83 住宅団地における都市公園の配置に関する研究−広島市の住宅団地を事例として−(塩出興二)
84 複雑化する<場>としての近代都市空間とその形成過程−戦後期の東京・丸の内を事例として−
(松橋達矢)
12:00〜13:00 昼食休憩(周辺飲食店をご利用ください。)
10月15日(土)午後 研究発表V <岩手教育会館>
13:00〜15:30
研究発表9 地域ブランドとまちづくり(C) 第1会場
91 都市と企業ブランドの形成(林 上)
92 地域ブランド創出・形成への一考察―「住まう場所」と「消費する場所」の関係再構築へ向けて (松本行眞)
93 市町村合併後の周辺都市における中心商業地のあり方(横畑択磨)
94 城下町「小田原」で起こっていること−中心市街地活性化と景観問題−(小野意雄)
研究発表10 コミュニティと生活支援(C) 第2会場
101 メガ・シティ・ジャカルタ郊外地区における地域住民活動−ポスヤンドゥを中心にして−(齊藤綾美)
102 過剰都市化に伴う町内共同性の変容−仙台市域を対象に−(伊藤嘉高)
103 「オルタナティブ社会」における事業型NPO(岩田若子)
104 現前する都市窮民−ホームレス問題の所在をめぐって−(馬場佳久)
研究発表11 コミュニティと生活支援(D) 第3会場
111 地域福祉計画の多様性−他計画との関係を考える― (東川 薫)
112 少子高齢化と持続可能性を考慮した移動指標による都市評価(石井裕介・日野泰雄・内田敬)
113 変化する世帯構造と地域の生活支援制度が住宅計画に与える影響について−計画学的アプローチによる高齢化・人口減少社会における住宅政策−(小山雄二・瀬口哲夫)
114 宮城県内における高齢者通所介護施設の整備に関する研究(近岡綾子・増田 聡)
研究発表12 都市基盤と行財政(C) 第4会場
121 東北の脱工業的変容と文化資本、社会関係資本(渡部 薫)
122 地方分権と地方税制改革(2)(兼子良夫)
123 平成の市町村合併と「市=都市」図式の終焉(中川 重)
124 大分県院内町の道路網と中津街道−歴史的経緯に着目して−(早川信介・堤昌文・真鍋寛和)
125 バス利用の選択構造について(堤 昌文)